2013年2月24日日曜日

スメルズ・ライク・ティーン・スピリット/ニルヴァーナ

Smells Like Teen Spirit/Nirvana

スメルズ・ライク・ティーン・スピリット/ニルヴァーナ 



<クロウダディ>を創刊したポール・ウィリアムズは、<スメルズ・ライク・ティーン・スピリット>について語っている。
この曲はほんとうにいい曲だ。サウンドがすばらしい。そして同時にとても愉快なレコードだ。この曲は、ロックンロールのもっとも重要な伝統というべきもののうえにつくられている・・・・楽しいばかばかしさ(〈踊りに行こうよ〉〈監獄ロック〉〈スモーク・オン・ザ・ウォーター〉そしてもちろん〈ルイ・ルイ〉などに共通する)。さらにそれと並行して、〈ブルー・スエード・シューズ〉から〈サティスフアクション〉〈プリティー・ヴェイカント〉、スーサイダル・テンデンシーズの〈イシスティテユーショナライズド〉に到る、怒りのこもったばかばかしさがある。  
そう!<スメルズ・ライク・ティーン・スピリット>は、
パンク・ロックとヘヴィ・メタルという奇妙な土壌のなかから生まれ
ロックンロールの王道に咲き、散った名花なのです。

ポール・ウィリアムズに耳を傾けましょう。


ティーン・スピリットとは、メンネン社が「ティーンのためにつくられたただひとつの制汗剤」という歌い文句で大規模な宣伝をしているデオドラント剤だ(リストの1曲目と100曲目の両方がタイトルにブランド名のはいった曲になった)。

そして〈スメルズ・ライク・ティーン・スピリット〉は、実際は現代という時代に反抗する歌であるのに、1990年、人口統計学上の分類をこえて広く知られるロックンロール・シングルの大ヒットとなった。

このヒットの結果、無名だったパンク・ロック/オルタナティヴのバンドのアルバムが600万枚売れ、周期的にくりかえされるレコード会社の「新サウンド」「つぎの大物」の獲得ヒステリーのきっかけとなった。

しかし、この曲はほんとうにいい曲だ。
レコードの最初からつづくザラザラしたリフ、そしてシンガーの声のサウンドによって、この曲がとっているばかばかしさという姿勢がみごとにコミュニケートされていることに気づいてほしい。 
かろうじて聞きとることのできる歌詞ーーー「ぼくたちはいまここにいる/楽しませてくれ!」「こんちは、こんちは、こんちは」「そうか、それでもかまうものか」などーもその効果をうまく支えている。「オルタナティヴ」の領域に出現した大きな音のすてきなサウンドのレコード、同時に、とても好きになれるレコードだ(ただし、この点ではヴァイオレント・ファムズのファースト・アルバムもおなじぐらいいい)。 
そしてまた、巧妙な形で強烈に知的でもあるーーーこの曲を好きになった人はみんな、たとえ大音響のばかばかしさにのめりこんでいても、このことを直感的に知っている。評論家や教科書は、ユーモアを持ちあわせてないことが多い。

そのためぼくたちは、ハムレットの「生きるべきか死ぬるべきか。それが問題だ」という台詞が風刺であり、シェイクスピアがハムレットや自分自身やぼくたち全員を翻弄していることを見逃しがちだ。〈スメルズ・ライク・ティーン・スピリット〉は、ぼくの勝手な見かたによれば、長い時間のあいだにストリートやガレージのレベルで融合した。 
パンク・ロックとヘヴィ・メタルという奇妙な土壌のなかから生まれ、その結果、ロックの聴衆のもっとも賢い要素ともっともばかばかしい要素をともにひとつ穴に投げこんだ。メダリストたちは自分たちが抑圧を感じている文化の価値を本気で攻撃し(「ホモは全員、ぶっ殺せ!」といった具合に)、真のオルタナティヴ・ファンはそれを知ってはいるが、それでもひとつ穴に投げこまれた。

グランジ・ロックのバンドであれば、自分がだれにむかって歌っているのか、だれのために歌っているのか、そして最終的には自分が何者であるのかについて考えるのは当然だ。

この歌は、その問題を陽気で楽しい形で(音楽や歌詞の面でのバンドの姿勢は、乱れた演奏によってしばしばなおざりになり、またファンのハイスクール生に対する自分たちの影響力を過大に考えて、肩に力がはいっているものの)、天賦のものともいえる想像力にすぐれた創造性と言語能力(そしてヴォーカルのことばの区切りかた、楽器の音の区切りかた)で語っている。歌の主人公が、マインド・コントロールを非難しているところを想像してくれ。たとえばMTVのガンズン・ローゼズのヴィデオ、その前後に流れるCM、それを見ている子供たちの受動的な反応を非難しているところを。

彼らにいいたいんだ、これは危険だと「ぼくたちはここにいる。楽しませてくれ」ばかになった気がする、この気分は伝染する「ぼくたちはここにいる。楽しませてくれ」ムラツトーアルビノモスキートーマイ・リビドー 愉快なことば。

シェイクスピアやエドワード一リアに匹敵するナンセンスのことば。愉快で恐ろしくて、そして充分に賢い。ロックンロールとは、こういうものだ。大きな音をたてる。いい気分にさせてくれる。自分を笑うことができるようにさせてくれる。自問させてくれる。ぼくたちを助けてくれるー-それぞれが個々に、また集団として、自分のなかにある力を感じ、いまとらわれているばかばかしい現実をみつめなおして改造する手伝いをしてくれる。

まわりにはぼくたちを抑圧する大きな騒音があるが、ぼくたちの内側には、もっと大きな騒音があることを思いださせてくれる。何が正しいのか、それを書きかえてくれる。「彼らに立ちむかわせてくれ!」革命の呼びかけた。立ち止まるには、もう遅すぎる。


拳銃に弾をつめて仲間を連れてこい
ハメをはずして遊ぶのは面白いぜ
彼女はひどく退屈していてひとりよがり
ああひどい言葉知ってるだろ
ハローハローどのくらいひどい?
得意なことをやるときのオレはもっと最低
この天分のお陰で祝福されてる気分になるよ
オレたちのグループはいつもそうだったし
最後までずっとそうさ
ハローハローどのくらいひどい?
なぜ手を出すのか忘れた
そうだニッコリさせてくれるからだと思う
それは並大抵のことじゃないし
そう簡単に見つかるものじゃない
まあいいや何だろうと気にすんな
明かりを消したほうが危険は少ない
さあオレたちはここだ楽しませてくれ
白黒混血児
白子

オレの性的衝動そして否定……


1.Smells Like Teen Spirit
2.In Bloom
3.Come As You Are
4.Breed
5.Lithium
6.Polly
7.Territorial Pissings
8.Drain You
9.Lounge Act
10.Stay Away
11.On A Plain
12.Something In The Way


2013年2月17日日曜日

ロンドン・コーリング/クラッシュ

LONDON CALLING/The Clash



このジャケットがすべてを語っている。

NYパンクはロックに牙をむかなかったが、ロンドンパンクは聖域だったロックンロールにまで牙をむいて吠えた。
エルヴィスもビートルズもストーンズも死んだと。

自分で聴きたい音楽は自分で作る。これがパンクの基本条件だ、

高いチケットを買って鑑賞するような必要はないし、何にも囚われないことが大事なのだ。

では勝手気侭にやればいいのか?ここがパンクの最も大きなポイントだ。


そう勝手気侭にやればいいのだ。

しかしたったひとつ忘れてはならないものがある。
「意識」だ。「最良の意識」が必要なのだ。

技術よりも意識。それはロックンロールの原点でもある。

イギリスは階級社会だ。ザ・クラッシュを支持するのは労働者階層だ。

ジョ-・ストラマ-は自分たちのギグにつめかけるファンの気持を思ってこういった|

「ヤツラにとってはいやな毎日の連続なんだ。
だから言うんだ、がんばれよ、くじけるなってな。
」と。


また「なにもしてない奴がなにも言うな」とも。彼等にとって下手とか上手とかが問題ではない。

生きているのか、死んでしまったのが問題なのだ。

パンクのリズムから飛んでくるのは「死ぬときは前のめリで倒れたい」という姿勢なんだろう。

いいかい、退屈なんかしているヒマはないんだぜ!



London Calling

1.London Calling
2.Brand New Cadillac
3.Jimmy Jazz
4.Hateful
5.Rudie Can't Fail
6.Spanish Bombs
7.Right Profile
8.Lost in the Supermarket
9.Clampdown
10.Guns of Brixton
11.Wrong 'Em Boyo
12.Death or Glory
13.Koka Kola
14.Card Cheat
15.Lover's Rock
16.Four Horsemen
17.I'm Not Down
18.Revolution Rock
19.Train in Vain

2013年2月10日日曜日

ハートに火をつけて/ザ・ドアーズ




ハートに火をつけて/ザ・ドアーズ 

Light My Fire /THE DOORS

アナーキー、カオスに関することなら何でも興味があるよ。
特に、何の意味もないと思える行動にね。
オレたちが描いている世界は文明の新しい辺境地域だ。
卑猥で邪悪な世界さ。


ジム・モリソン(ドアーズ)



ロックンロールはシングル盤にこそ生命力がある。しかしシングル盤としてリリースされた<ハートに火をつけて>は、途中が削除されていた。それは悲しい出来事だが、電波に乗った<ハートに火をつけて>は、アルバムバージョンのものもあり、熱いハートは救われた。


ジム・モリソンは、エルヴィス・プレスリーをこよなく愛していた。
R&Bから発展して誕生したロックンロールの旗手に畏敬の念を隠さない。

一方でポスト・ボブ・ディランとして脚光を浴びていた。
背景にベトナム戦争があり、反戦運動が広がっていた。
反戦の本山となった サンフランシスコは、ビート族の本山でもある。


プロテストなバンドとして
 ドアーズは喝采を浴びた。
<ハートに火をつけて>は、そんなこととは無関係に、そのカッコよさが受けた。
<ハートに火をつけて>と併せて<ハロー・アイ・ラブ・ユー>を聴くと、つくづくそう思う。
もともと純粋に音楽を愛していたのだと思う。



なぜジム・モリソンは死んだのか?

ジム・モリソンが屈折していたのではなく、時代が彼を屈折して眺めたのではないだろうか?
ロックンロールは戦う宿命を、エルヴィスと社会の関係性で余儀なくされた。
ジム・モリソンは、ロックを愛したばかりに、その関係性まで受け入れたのではないだろうか?

このジャケットのまなざしが痛い。


THE DOORS

























ベスト・オブ・ドアーズ 2000 (2CDヴァージョン)
ディスク: 1 
1.ハートに火をつけて
2.ハロー・アイ・ラヴ・ユー
3.まぼろしの世界
4.ラヴ・ミー・トゥ・タイムズ
5.タッチ・ミー
6.ストレンジ・デイズ
7.スパニッシュ・キャラバン
8.月光のドライヴ
9.一緒にいられたら
10.名もなき兵士
11.ハイウェイの女王
12.シェイマンズ・ブルース
13.テキサス・ラジオ
14.L.A.ウーマン
15.ウイスキー,ミスティックス・アンド・メン
16.夏は去りゆく
17.迷子の少女
18.音楽が終ったら
19.ノー・ミー・モレステ・モスキート(デンズモア,マンザレク&クリーガー)

ディスク: 2 
1.ライダーズ・オン・ザ・ストーム
2.ブレーク・オン・スルー
3.ロードハウス・ブルース
4.ソウル・キッチン
5.ラヴ・ハー・マッドリー
6.アラバマ・ソング
7.ピース・フロッグ
8.太陽を待ちながら
9.フー・スケアード・ユー
10.水晶の舟
11.ウィッシュフル・シンフル
12.ラヴ・ストリート
13.ウインタータイム・ラヴ
14.ザ・スパイ
15.バック・ドア・マン
16.マイ・アイズ・ハヴ・シーン・ユー
17.ファイヴ・トゥ・ワン
18.ジ・エンド ※〈CDエクストラ〉

2013年2月3日日曜日

ハリケーン/ボブ・ディラン


Hurricane/
BOB DYLAN
太った魂を揺さぶり、叩き起こす。
この歌は「警報」だ。
 

ボブ・ディラン、一世一代の大傑作<ライク・ア・ローリングストーン>と双璧をなす曲だ、コレは。
8分を超える大作は正義とともに疾走する。疾走する果てがよくわからないけど、その分、一層アドレナリンが体内を駆け巡る。

あまりの振動にココロを揺らさずに聴くのは至難の技です。揺れまくり必至。
電車で聴いたら倒れます。振り子列車なら失神です。

このハリケーンとは、
米東岸で多くの人々を痛めつけたあのハリケーンではありません。 

映画『ハリケーン』が公開されているので、映画を観たら意味がよく分かります。
実際の事件に関連して創られました。


ボクサー、ルービン「ハリケーン」・カーターは無実でありながら殺人罪で有罪とされた。ディランはカーターを信じて、この事件を広く世間に知らせることに挑戦した。味方を得て再審が行われたが、再び有罪となった。しかし1988年、22年間牢獄で過ごした後にやっと、この判決が人種差別に基づくものだったとして釈放された。

この曲がなんだったのか分かったいま、ボブ・ディランの最高傑作に位置づけても問題ないくらいに素敵です。この曲はアメリカ政府の政策を鋭く批判した曲でありながら、1984年大統領選の出馬した候補者にも愛されたのです。

このシンプルでパワーに満ちた曲によってボブ・ディランの支持者になった者も多い。
ボブ・ディランの陰気な雰囲気に逃げたくなる人もシビれること間違いなしのロックンロール史上に燦然と輝く至上の名曲です。

ボブ・ディラン の最大の魅力はその声にあります。
その 声が明確な主張をしたとき、声はさらに威力を増し、無敵なまでにたくましい声になります。特に<ハリケーン>はウルウルです。

声の魅力でいうなら最高峰にエルヴィス・プレスリーが擧げられます。
ボブの声の魅力はエルヴィスのそれとは異質。
エルヴィスはボブ・ディランの作った<明日は遠く>を歌っているので、聴き比べるとこれが同じ曲かと思うぐらいに違うからおもしろい。
それはアレンジされているわけではなくて、声による違いと文化の 違いで曲がまるで変わってしまう。

ハードウェアでは遜色のない日本が、ソフトウェアではアメリカの相手にならないほど弱い。その理由が分かるような気がします。
それほど両者の声の魅力はドキドキするほど創造的。これぞ!ソフトウェアの力です。アメリカの偉大です!

その魅力あふれる声が、<ハリケーン>では一層魅力的に聴く者をなぎ倒す。
倒されてしまってください。気持ちいいですから。

激しい!声がシャウトしているのではない。ボブの文化がラップ状態でシャウトします!
くり返されるフレーズの中に反撃と同じだけ挫折が内包されている。その分激しい。当然、聴く者は 激しく揺れます。壁さえも揺れる。


♬君がもし黒人なら、通りには出ないことだ。
警官につけ回されたくなければ♬

ただ日々だけが無意味に過ぎていく。22年間だ!気が遠くなりそうな無意味。
単調なサウンドのくり返しが時間の経過とともに「無意味」の凄みを増していく。ディランが聴く者の心を鷲掴みにして引き込んで行く。。。。

素晴らしい!
一生の間で、こんな曲とどれだけ出会えるだろうか。

この曲の姿勢はロックンロールの本質そのもの、生きるうえでパンクそのもの。
AKBを8分聴いても人生の8分は過ぎる。
<ハリケーン>を聴いても8分過ぎる。


個人が選択権を持っている。



ここではライブバージョンをお楽しみいただけますが、この曲のオリジナルバージョンを収録したアルバム『DESIRE/欲望』はボブ・ディランのキャリアを代表する素晴らしい一枚です。シングル盤でも<ハリケーン>はリリースされましたが、アルバム収録バージョンとは違っています。


欲望
1.ハリケーン
2.イシス
3.モザンビーク
4.コーヒーもう一杯
5.オー,シスター
6.ジョーイー
7.ドゥランゴのロマンス
8.ブラック・ダイアモンド湾
9.サラ ※〈CD/SA-CDハイブリッド仕様〉 

ザ・ベスト・オブ・ボブ・ディラン VOL.2
1.シングス・ハヴ・チェンジド
2.激しい雨が降る
3.悲しきベエイブ
4.サブタレニアン・ホームシック・ブルース
5.寂しき4番街
6.追憶のハイウェイ61
7.雨の日の女
8.アイ・ウォント・ユー
9.アイル・ビー・ユア・ベイビー・トゥナイト
10.マイティ・クイン
11.運命のひとひねり
12.ハリケーン
13.チェンジング・オブ・ザ・ガード
14.ライセンス・トゥ・キル
15.シルヴィオ
16.ディグニティ
17.ノット・ダーク・イエット
18.いつまでも若く(Biographヴァージョン)