2013年5月12日日曜日

ホリディズ・イン・ザ・サン/セックス・ピストルズ



HOLIDAYS IN THE SUN/THE SEX PISTOLS
私はパンクじゃないし、なぜ人が私のことをパンクのゴッドファーザーなどと考えるのか分からんのだよ。
お前さんならパンクをどう定義づける?

この言葉から連想されることっていうのは、若気の至りで取るに足らない犯罪を犯した若者くらいしかないじゃないか。
まあこう考えれば、私の小説の登場人物はみなパンクかもしれんが。
この言葉自体は50年代にはなかったんだよ。

強いて言うなら『理由なき反抗』の中で、ジェームス・ディーンの演じていた若者がそうだと言えんこともないだろう。

だがしかし、一体こいつはなんだんだろうな?
いわゆるパンク・ムーヴエントという奴は、メディアの産物だと私は思うな。
しかしイギリスのセックス・ピストルズに手紙を送ったことは事実だよ。
これは私が常に言ってることなんだが、女王に対して苛立ちを示す人間が2万人くらい集まらなければ、あの国は見込みがないからなんだ。

私がセックス・ピストルズを支持する理由は、もうなにもかもメチャメチャになった国に対して、彼らが非常に大切で建設的な批判を加えているからなんだよ。


ウィリアム・パロウズ 






騒音が部屋をきれいにしてくれる。空気清浄機のような音楽。「お前は悪い、ボクは正しいと」とは言わずに、敵対することなく越えて行く。「お前なんか知ったことか」ハハハ、面白い。
対立することを越えてピストルズは最後の一発を射ちこんだ。ベルリンの壁だって壊せるくらいの一撃だ。邦題は「さらばベルリンの陽」だった。
ホリディズ・イン・ザ・サン>は「他人の悲惨を踏み台にしたお手軽な休日だ」と夫が妻に言うところから始まります。怒りのボーカルは怒っているがギターは応援する、とてもエネルギーを使う音楽だが、これを騒音と言うのか、騒音だと言う言葉が騒音なのか、試されているような気がする。

2013年3月24日日曜日

ドッグ・オブ・ザ・ベイ/オーティス・レデイング


Sitting On The Dock Of The Bay/Otis Redding




♬ 朝日の上に座って
夜も座っているだろう
船が港に入って来るのを見ながら
そして船がまた遠ざかっていくのを見ながら

港のドックに座って
塩の満ち引きを見ながら
ただ港のドックに座って
時間を無駄につぶしている

故郷のジョージアを離れ
サン・フランシスコ湾に向かった
ボクには何も生きがいもなかったから
何も自分にいいことが起きそうもなかったから
だからただ
港のドックに座って
潮の満ち引きを見ながら
ただ港のドックに座って
時間を無駄につぶしているんだ

何も変わりそうもない
すべてが同じままだ
10人の人の言うことがボクにはできない
だからいつも同じままでいるのさ、

ここに座って骨休めをして
この孤独とずっと付き合って行くんだろう
2000マイルさまよって
辿り着いたこのドックを家にするだけだ

だからただ
港のドックに座って
潮の満ち引きを見ながら
ただ港のドックに座って
時間を無駄につぶすのさ ♬

このネガティブな憂鬱と罪悪感が全編を覆っている曲<ドッグ・オブ・ザ・ベイ>が世界的大ヒットになることをオーティス・レディングは知っていた。収録を終えると「この曲は、俺の初めてのミリオン・セラーになるよ!」と予言した。そして収録後、わずか3日後の1967年12月10日、彼は重大な任務を終えたように大空で天に召された

彼は、もういなかったが、その通りになった。翌年の1968年3月16日に全米1位を獲得、年間チャートでも6位に入る大ヒットを記録となり、世界に波及した。

この曲は自分の命を越え、よろ大きな時空を越えて不滅の名曲になることを知っていた。彼は知っていた、蝋燭の燭台のようなレコード盤から聴こえてくるのは、解放、自由、独立に関する宣言だ。淡々となにもしない情景が静かに歌われる。

頼るものはなにもない。邪魔するものもない。悲観もないが光明もない。果てしない孤独だけが癒しだ。

10人の人の言うことがボクにはできない
だからいつも同じままでいるのさ。

それでいいのだと、自分を肯定している。これこそが自由の基本であり、受け入れるからこそ、歓喜がある。
恐ろしくシンプルで力強い曲だ。

この曲に匹敵するのは自殺者の手記が元ネタの<ハートブレイクホテル>だ。
死ぬのも、ただの一日なら、このレコードもただの一枚にすぎない。

しかしオーティスは知っていた。
ただの一枚にすぎないが、他にすることものない一枚の輝きを知っていた。








2013年3月10日日曜日

ア・フール・サッチ・アズ・アイ/エルヴィス・プレスリー


エルヴィス・プレスリーのギネスのひとつにミリオンセラーの記録があります。しのぎを削るのは、ビートルズだけです。ミリオンセラーを集めたアルバムは4枚あるが、その2枚目がこれ。兵役に就いてから解かれるまでの2年間にリリースされた曲を集めています。つまり出した曲は全部ミリオンセラーになっている。

ELVIS PRESLEY GOLDEN RECORDS VOL.2

  1.  I Need Your Love Tonight 
  2.  Don't 
  3.  Wear My Ring Around Your Neck
  4.  My Wish Came True
  5.  I Got Stung 
  6.  One Night 
  7. .Big Hunk O' Love, A 
  8.  I Beg Of You 
  9.  (Now And Then There's) Fool Such As I,
  10.  Doncha' Think It's Time 

このジャケットがエルヴィスがロックンローラ-だったことを語っているのは当たり前だ。このアルバムに収録されている<ONE NIGHT>には狂ってしまう。若いエルヴィスの声は最高だ。

この<ONE NIGHT>に匹敵する<ONE NIGHT>はキングのキャリアでもクリスマスに全米視聴率70.2%に達した<シッドダウン・ショー>しかない。

<恋の大穴>のピアノのノリはどうだ、ギターもかっこいい。エルヴィスもワイルドに爆発しているかと思ったら"that's right"って気合いいれるように歌うなんともかわいい声はどうなってるんだ!!声にギターとピアノが絶妙にからんで、ああ、この神業のようなバランスに狂ってしまう!このイカれ具合がロックンロールの神髄だ!

<I Need Your Love Tonight >の伴奏ってきたらどうだ。

Oh!Oh!って一体どうなっているんだ。
このとってもデンジャラスな匂いのするラブソングで”hi-fi”って歌詞聴くたびに、そう掲示板で話題になっている<疑似ステレオ>を連想したよ。”I Need Your Love Tonight ”と求める愛まで疑似じゃないのかと思ったものさ。

そのイントロが聴こえてきたら、もうどうにもこうにもなるもんか!渋いコーラスに続いて、ああ、なんとも、なんとも、ああ、美しい声!ああ、エルヴィス万歳!


しかし、エルヴィス・プレスリー史上、もっとも美しい声は、カントリーをロックに仕立てたこの曲にある。<ア・フール・サッチ・アズ・アイ>

(Now And Then There's)A FOOL SUCH AS l
             /ELVIS PRESLEY
【直撃レベル】
は生きててよかったレベル
は狂ってしまうレベル
ピンクはよだれダラダラレベル

(Now and then therei s a fool such as I)
Pardon me if l'm sentimental
When we say good
bye
Don ' t be an 
gry with me
Should I cry
When you ' re gone,
yet I' Il dream
A Iittle
dream as years go by
Now and then, there ' s a fool
such as I
Now and then, there ' s a fool such as I am over you
You taught me how to love
And now you say that we are through
I ' m a fool,
but I ' Il love you, dear
Until the day I die
Now and then there 's a fool such as I

(間奏)
(Now and then, there's a fool such as I)
Now an
d then, there ' s a fool such as I am over you
You taught me how to love
And now you say that we are through
I ' m a fool, but I ' Il love you, dear
Until the day I die
Now an
d then there 's a fool such as I
Now and then there 's a fool such as I
Now and then there 's a fool such as I


(ライブ音源)

いきなりだ!出合い頭の直撃パンチだ!”
Pardon me”のPardonから meへの降下、ああ、こんなことがあっていいのか!あまりの甘さに頭から頬へと震えが伝わっている間に、ざらついた感触でスパッとブラッキラ棒に Should I cryと歌う。”Should”の切れ具合はどうだ、あっという間に一発で決める。なんという奴だ!そのあとに続く少し悲しげな声に鳥肌がたつ、ああ許してやりたい、許すしかない。と思っていたらsuch as Iでまた何気なく不敵な声でスパッとやる。コイツは確信犯だ。
コーラスのノリも最高だ!間奏が終わった後の”there ' s a fool such as I am””I ' m a fool, but I ' Il love you,”にはKOパンチだ!特に”there ' s a fool such as I am”は骨だって溶ける!隣にナースがいてくれなきゃ心配だ!これは犯罪だ。裁判所が「直立不動で歌え」とクレームつけるのも無理のない話だ。直立不動で歌ったってたくさんの人は失神したけどね。
それにしてもこのギターはどうなっているんだ。チェット・アトキンスだろうが誰だろうが、ああ、たまらない。フェイドアウトに入る前の foolはどうだ。こいつは一体何を考えてこんな歌い方をするんだ!

しかし、この曲に対する思いと、世間の評価(ベストアルバムなどでの扱い方)にズレを感じていたが、ビリー諸口氏もこの”Pardon me”のmeの声とチェット・アトキンスのプレイに関して「最高峰」と評価しているのを発見して、永年の苦悩は金ラメスーツのポケットに消え去った。
ボブ・ディランがカヴァ-したのもオリジナルのハンク・スノウではなく、エルヴィスだったというのも当然だ。

ミリオンヒットの山を持つエルヴィスのキャリアの中でア・フール・サッチ・アズ・アイ>は特に重要な曲ではないが、リリースされたシングルの声の美しさは文句なしに最高だ。
このアルバムは完全無敵のロックンローラーとして躍動感にあふれている。自信が満ちあふれている。< Don't >と< My Wish Came True>のみが1957年の録音、残りは1958年の入隊前後を中心として<ELVIS IS BUCK!>の片鱗も聴きとれる。キングのキャリアの中でも最もバランスがよかった時代と思う。天才がさらなる努力と研鑽と傲慢に磨かれて輝いて、金ラメのスーツがこれほど似合う男はいない。
キングは地上最強の金ラメ男だったことを忘れるな!

(スタジオ音源)

2013年3月3日日曜日

サティスファクション/ローリング・ストーンズ


(I Can't Get No) Satisfaction
     / The Rolling Stones


1962にデビューしたロックバンド「ローリング・ストーンズ」を一介のロックバンドからモンスターバンドに変えたのはこの曲だ」とミック自身が語る名曲「サティスファクション」は、ミックとキース・リチャーズが1965年に共作、世界的にメガヒットした曲。

満足できないぜ、満たされないんだ
満足感なんてありやしない
満足できない、満たされない、不満だらけだぜ

ロックンロールコンサートでアメリカ男性がよくする行為。
エキサイトするときは、乗って行こうと上半身裸になります。
この曲は典型的なそれ。

満足しないどころか、大満足ですね。



ミックジャガー、曰く

「ロックに必要なのは3つのコードとシンプルな言葉だけだ。シンプルであればあるほどストレートに響くんだ」


執拗なリフから始まる・・・・
聴く者はこれから何が起こるのか、集中せずにはいられなくなる。

<サティスファクション>か、聞き飽きたよ。そういう人もいるかも知れない。・・・・だとしたら、少し考えた方がいいかも知れない。

この曲が初めて流れたのは1965年のことだ。それ以来4週連続で全米ヒットチャートトップを続けた。それから48年の月日が流れた。確かに聞き飽きたかも知れない。

しかし、問題はそういうことではない。

音楽は何のためにあるのか?

それをこの曲は正しく伝えてくれる。

(I Can't Get No) Satisfaction ♬

・・・・心が動かないことに対して満足できないことを怒っているのだ。
聞き飽きたというのは、もう十分に心が動くようになったということか、あるいは動かすことに飽きたということだ。あるいは諦めたか、だとしたら問題だが。


音楽は心を動かすためにある。

この曲を雛祭りに一日中、かけたからって驚くことはない。

思い切り、心を動かすんだ。
自分自身の最大の敵。
たとえば時間、怠け心、恐怖だ。
そういうものを全部詰め込んで、駆逐するのだ。
この曲はそのためにだけ存在している。
だからこそ、48年間輝きを失わなかった。

いまこの瞬間、たとえば雛祭りの日なら

満足した一日にするために、
大切な人の人生を全身全霊で支えようとする者のためにある曲だ。

そういう風にして、

一日一日を軌道修正していくための音楽。

(I Can't Get No) Satisfaction ♬


全然満足できないぜ!

最良のために、否定から始める。
いつだって、いまが最低なんだ。


つまり一分後には、

いまが最高になっているっていうことだ!

相変わらず、
全然満足できないけどね。




この曲は聴く者の心の中で響きわたる。そこにしか響かない。

心を動かすために、必要なエネルギーを満たそうとして、
執拗なギターとドラムのリフ、ミック・ジャガーのボーカルが全力で追う。
なんという美しい曲だ。いつまでも美しい。

2004年にローリング・ストーン誌が選んだ「史上最高のロック500曲」の2位に選ばれた。一位は<ライク・ア・ローリングストーン/ボブ・ディラン>だった。 


♬ 全然、満足できない
満たされない
やってみるんだが
いろいろ
やってみるんだが
どうしても俺は全然満足できないんだ
車を運転していると
ラジオから男がでてきて
いつまでもいつまでも
くだらないことばかり話している
俺の想いにに火をつけるように
俺はどうしても満足できないんだ
そうなんだよ
満足できない
満たされない
やってみるんだが
いろいろ
やってみるんだが
どうしても俺は満足できないよ
テレビを見ていると
あの男が現れて俺に言う
私の着ているシャツ、真っ白でしょう
でもあいつはろくな男じゃない
俺と同じタバコをすっていないから
ああ、俺は全然、満たされないんだ
そういうことなんだよ
俺は満足できない
女の子の反応がない
やってみるんだが
いろいろ
やってみるんだが
どうしても、どうしてもだめだ
世界中をかけまわっても
これをやって、あれを歌っても
ある女の子とうまいことやろうとすると
俺に言うんだ、坊や、来週にでもおいで
わかるか、俺はずっと負け続けだよ
ああ、
全然、満足できないんだよ
満たされない
そういうことさ



I can't get no satisfaction,
I can't get no satisfaction.
'Cause I try and I try and I try and I try.
I can't get no, I can't get no.

When I'm drivin' in my car
and a man comes on the radio
and he's tellin' me more and more
useless information
supposed to misfire my imagination.
I can't get no, oh no no no.
Hey hey hey, that's what I say.

I can't get no satisfaction,
I can't get no satisfaction.
'Cause I try and I try and I try and I try.
I can't get no, I can't get no.

When I'm watchin' my TV
and a man comes on to tell me
how white my shirts can be.
Well he can't be a man 'cause he doesn't smoke
the same cigarrettes as me.
I can't get no, oh no no no.
Hey hey hey, that's what I say.

I can't get no satisfaction,
I can't get no girl reaction.
'Cause I try and I try and I try and I try.
I can't get no, I can't get no.

When I'm ridin' round the world
and I'm doin' this and I'm signing that
and I'm tryin' to make some girl
who tells me baby better come back later next week
'cause you see I'm on losing streak.
I can't get no, oh no no no.

Hey hey hey, that's what I say.
I can't get no, I can't get no,
I can't get no satisfaction,
no satisfaction, no satisfaction, no satisfaction.







2013年2月24日日曜日

スメルズ・ライク・ティーン・スピリット/ニルヴァーナ

Smells Like Teen Spirit/Nirvana

スメルズ・ライク・ティーン・スピリット/ニルヴァーナ 



<クロウダディ>を創刊したポール・ウィリアムズは、<スメルズ・ライク・ティーン・スピリット>について語っている。
この曲はほんとうにいい曲だ。サウンドがすばらしい。そして同時にとても愉快なレコードだ。この曲は、ロックンロールのもっとも重要な伝統というべきもののうえにつくられている・・・・楽しいばかばかしさ(〈踊りに行こうよ〉〈監獄ロック〉〈スモーク・オン・ザ・ウォーター〉そしてもちろん〈ルイ・ルイ〉などに共通する)。さらにそれと並行して、〈ブルー・スエード・シューズ〉から〈サティスフアクション〉〈プリティー・ヴェイカント〉、スーサイダル・テンデンシーズの〈イシスティテユーショナライズド〉に到る、怒りのこもったばかばかしさがある。  
そう!<スメルズ・ライク・ティーン・スピリット>は、
パンク・ロックとヘヴィ・メタルという奇妙な土壌のなかから生まれ
ロックンロールの王道に咲き、散った名花なのです。

ポール・ウィリアムズに耳を傾けましょう。


ティーン・スピリットとは、メンネン社が「ティーンのためにつくられたただひとつの制汗剤」という歌い文句で大規模な宣伝をしているデオドラント剤だ(リストの1曲目と100曲目の両方がタイトルにブランド名のはいった曲になった)。

そして〈スメルズ・ライク・ティーン・スピリット〉は、実際は現代という時代に反抗する歌であるのに、1990年、人口統計学上の分類をこえて広く知られるロックンロール・シングルの大ヒットとなった。

このヒットの結果、無名だったパンク・ロック/オルタナティヴのバンドのアルバムが600万枚売れ、周期的にくりかえされるレコード会社の「新サウンド」「つぎの大物」の獲得ヒステリーのきっかけとなった。

しかし、この曲はほんとうにいい曲だ。
レコードの最初からつづくザラザラしたリフ、そしてシンガーの声のサウンドによって、この曲がとっているばかばかしさという姿勢がみごとにコミュニケートされていることに気づいてほしい。 
かろうじて聞きとることのできる歌詞ーーー「ぼくたちはいまここにいる/楽しませてくれ!」「こんちは、こんちは、こんちは」「そうか、それでもかまうものか」などーもその効果をうまく支えている。「オルタナティヴ」の領域に出現した大きな音のすてきなサウンドのレコード、同時に、とても好きになれるレコードだ(ただし、この点ではヴァイオレント・ファムズのファースト・アルバムもおなじぐらいいい)。 
そしてまた、巧妙な形で強烈に知的でもあるーーーこの曲を好きになった人はみんな、たとえ大音響のばかばかしさにのめりこんでいても、このことを直感的に知っている。評論家や教科書は、ユーモアを持ちあわせてないことが多い。

そのためぼくたちは、ハムレットの「生きるべきか死ぬるべきか。それが問題だ」という台詞が風刺であり、シェイクスピアがハムレットや自分自身やぼくたち全員を翻弄していることを見逃しがちだ。〈スメルズ・ライク・ティーン・スピリット〉は、ぼくの勝手な見かたによれば、長い時間のあいだにストリートやガレージのレベルで融合した。 
パンク・ロックとヘヴィ・メタルという奇妙な土壌のなかから生まれ、その結果、ロックの聴衆のもっとも賢い要素ともっともばかばかしい要素をともにひとつ穴に投げこんだ。メダリストたちは自分たちが抑圧を感じている文化の価値を本気で攻撃し(「ホモは全員、ぶっ殺せ!」といった具合に)、真のオルタナティヴ・ファンはそれを知ってはいるが、それでもひとつ穴に投げこまれた。

グランジ・ロックのバンドであれば、自分がだれにむかって歌っているのか、だれのために歌っているのか、そして最終的には自分が何者であるのかについて考えるのは当然だ。

この歌は、その問題を陽気で楽しい形で(音楽や歌詞の面でのバンドの姿勢は、乱れた演奏によってしばしばなおざりになり、またファンのハイスクール生に対する自分たちの影響力を過大に考えて、肩に力がはいっているものの)、天賦のものともいえる想像力にすぐれた創造性と言語能力(そしてヴォーカルのことばの区切りかた、楽器の音の区切りかた)で語っている。歌の主人公が、マインド・コントロールを非難しているところを想像してくれ。たとえばMTVのガンズン・ローゼズのヴィデオ、その前後に流れるCM、それを見ている子供たちの受動的な反応を非難しているところを。

彼らにいいたいんだ、これは危険だと「ぼくたちはここにいる。楽しませてくれ」ばかになった気がする、この気分は伝染する「ぼくたちはここにいる。楽しませてくれ」ムラツトーアルビノモスキートーマイ・リビドー 愉快なことば。

シェイクスピアやエドワード一リアに匹敵するナンセンスのことば。愉快で恐ろしくて、そして充分に賢い。ロックンロールとは、こういうものだ。大きな音をたてる。いい気分にさせてくれる。自分を笑うことができるようにさせてくれる。自問させてくれる。ぼくたちを助けてくれるー-それぞれが個々に、また集団として、自分のなかにある力を感じ、いまとらわれているばかばかしい現実をみつめなおして改造する手伝いをしてくれる。

まわりにはぼくたちを抑圧する大きな騒音があるが、ぼくたちの内側には、もっと大きな騒音があることを思いださせてくれる。何が正しいのか、それを書きかえてくれる。「彼らに立ちむかわせてくれ!」革命の呼びかけた。立ち止まるには、もう遅すぎる。


拳銃に弾をつめて仲間を連れてこい
ハメをはずして遊ぶのは面白いぜ
彼女はひどく退屈していてひとりよがり
ああひどい言葉知ってるだろ
ハローハローどのくらいひどい?
得意なことをやるときのオレはもっと最低
この天分のお陰で祝福されてる気分になるよ
オレたちのグループはいつもそうだったし
最後までずっとそうさ
ハローハローどのくらいひどい?
なぜ手を出すのか忘れた
そうだニッコリさせてくれるからだと思う
それは並大抵のことじゃないし
そう簡単に見つかるものじゃない
まあいいや何だろうと気にすんな
明かりを消したほうが危険は少ない
さあオレたちはここだ楽しませてくれ
白黒混血児
白子

オレの性的衝動そして否定……


1.Smells Like Teen Spirit
2.In Bloom
3.Come As You Are
4.Breed
5.Lithium
6.Polly
7.Territorial Pissings
8.Drain You
9.Lounge Act
10.Stay Away
11.On A Plain
12.Something In The Way


2013年2月17日日曜日

ロンドン・コーリング/クラッシュ

LONDON CALLING/The Clash



このジャケットがすべてを語っている。

NYパンクはロックに牙をむかなかったが、ロンドンパンクは聖域だったロックンロールにまで牙をむいて吠えた。
エルヴィスもビートルズもストーンズも死んだと。

自分で聴きたい音楽は自分で作る。これがパンクの基本条件だ、

高いチケットを買って鑑賞するような必要はないし、何にも囚われないことが大事なのだ。

では勝手気侭にやればいいのか?ここがパンクの最も大きなポイントだ。


そう勝手気侭にやればいいのだ。

しかしたったひとつ忘れてはならないものがある。
「意識」だ。「最良の意識」が必要なのだ。

技術よりも意識。それはロックンロールの原点でもある。

イギリスは階級社会だ。ザ・クラッシュを支持するのは労働者階層だ。

ジョ-・ストラマ-は自分たちのギグにつめかけるファンの気持を思ってこういった|

「ヤツラにとってはいやな毎日の連続なんだ。
だから言うんだ、がんばれよ、くじけるなってな。
」と。


また「なにもしてない奴がなにも言うな」とも。彼等にとって下手とか上手とかが問題ではない。

生きているのか、死んでしまったのが問題なのだ。

パンクのリズムから飛んでくるのは「死ぬときは前のめリで倒れたい」という姿勢なんだろう。

いいかい、退屈なんかしているヒマはないんだぜ!



London Calling

1.London Calling
2.Brand New Cadillac
3.Jimmy Jazz
4.Hateful
5.Rudie Can't Fail
6.Spanish Bombs
7.Right Profile
8.Lost in the Supermarket
9.Clampdown
10.Guns of Brixton
11.Wrong 'Em Boyo
12.Death or Glory
13.Koka Kola
14.Card Cheat
15.Lover's Rock
16.Four Horsemen
17.I'm Not Down
18.Revolution Rock
19.Train in Vain

2013年2月10日日曜日

ハートに火をつけて/ザ・ドアーズ




ハートに火をつけて/ザ・ドアーズ 

Light My Fire /THE DOORS

アナーキー、カオスに関することなら何でも興味があるよ。
特に、何の意味もないと思える行動にね。
オレたちが描いている世界は文明の新しい辺境地域だ。
卑猥で邪悪な世界さ。


ジム・モリソン(ドアーズ)



ロックンロールはシングル盤にこそ生命力がある。しかしシングル盤としてリリースされた<ハートに火をつけて>は、途中が削除されていた。それは悲しい出来事だが、電波に乗った<ハートに火をつけて>は、アルバムバージョンのものもあり、熱いハートは救われた。


ジム・モリソンは、エルヴィス・プレスリーをこよなく愛していた。
R&Bから発展して誕生したロックンロールの旗手に畏敬の念を隠さない。

一方でポスト・ボブ・ディランとして脚光を浴びていた。
背景にベトナム戦争があり、反戦運動が広がっていた。
反戦の本山となった サンフランシスコは、ビート族の本山でもある。


プロテストなバンドとして
 ドアーズは喝采を浴びた。
<ハートに火をつけて>は、そんなこととは無関係に、そのカッコよさが受けた。
<ハートに火をつけて>と併せて<ハロー・アイ・ラブ・ユー>を聴くと、つくづくそう思う。
もともと純粋に音楽を愛していたのだと思う。



なぜジム・モリソンは死んだのか?

ジム・モリソンが屈折していたのではなく、時代が彼を屈折して眺めたのではないだろうか?
ロックンロールは戦う宿命を、エルヴィスと社会の関係性で余儀なくされた。
ジム・モリソンは、ロックを愛したばかりに、その関係性まで受け入れたのではないだろうか?

このジャケットのまなざしが痛い。


THE DOORS

























ベスト・オブ・ドアーズ 2000 (2CDヴァージョン)
ディスク: 1 
1.ハートに火をつけて
2.ハロー・アイ・ラヴ・ユー
3.まぼろしの世界
4.ラヴ・ミー・トゥ・タイムズ
5.タッチ・ミー
6.ストレンジ・デイズ
7.スパニッシュ・キャラバン
8.月光のドライヴ
9.一緒にいられたら
10.名もなき兵士
11.ハイウェイの女王
12.シェイマンズ・ブルース
13.テキサス・ラジオ
14.L.A.ウーマン
15.ウイスキー,ミスティックス・アンド・メン
16.夏は去りゆく
17.迷子の少女
18.音楽が終ったら
19.ノー・ミー・モレステ・モスキート(デンズモア,マンザレク&クリーガー)

ディスク: 2 
1.ライダーズ・オン・ザ・ストーム
2.ブレーク・オン・スルー
3.ロードハウス・ブルース
4.ソウル・キッチン
5.ラヴ・ハー・マッドリー
6.アラバマ・ソング
7.ピース・フロッグ
8.太陽を待ちながら
9.フー・スケアード・ユー
10.水晶の舟
11.ウィッシュフル・シンフル
12.ラヴ・ストリート
13.ウインタータイム・ラヴ
14.ザ・スパイ
15.バック・ドア・マン
16.マイ・アイズ・ハヴ・シーン・ユー
17.ファイヴ・トゥ・ワン
18.ジ・エンド ※〈CDエクストラ〉

2013年2月3日日曜日

ハリケーン/ボブ・ディラン


Hurricane/
BOB DYLAN
太った魂を揺さぶり、叩き起こす。
この歌は「警報」だ。
 

ボブ・ディラン、一世一代の大傑作<ライク・ア・ローリングストーン>と双璧をなす曲だ、コレは。
8分を超える大作は正義とともに疾走する。疾走する果てがよくわからないけど、その分、一層アドレナリンが体内を駆け巡る。

あまりの振動にココロを揺らさずに聴くのは至難の技です。揺れまくり必至。
電車で聴いたら倒れます。振り子列車なら失神です。

このハリケーンとは、
米東岸で多くの人々を痛めつけたあのハリケーンではありません。 

映画『ハリケーン』が公開されているので、映画を観たら意味がよく分かります。
実際の事件に関連して創られました。


ボクサー、ルービン「ハリケーン」・カーターは無実でありながら殺人罪で有罪とされた。ディランはカーターを信じて、この事件を広く世間に知らせることに挑戦した。味方を得て再審が行われたが、再び有罪となった。しかし1988年、22年間牢獄で過ごした後にやっと、この判決が人種差別に基づくものだったとして釈放された。

この曲がなんだったのか分かったいま、ボブ・ディランの最高傑作に位置づけても問題ないくらいに素敵です。この曲はアメリカ政府の政策を鋭く批判した曲でありながら、1984年大統領選の出馬した候補者にも愛されたのです。

このシンプルでパワーに満ちた曲によってボブ・ディランの支持者になった者も多い。
ボブ・ディランの陰気な雰囲気に逃げたくなる人もシビれること間違いなしのロックンロール史上に燦然と輝く至上の名曲です。

ボブ・ディラン の最大の魅力はその声にあります。
その 声が明確な主張をしたとき、声はさらに威力を増し、無敵なまでにたくましい声になります。特に<ハリケーン>はウルウルです。

声の魅力でいうなら最高峰にエルヴィス・プレスリーが擧げられます。
ボブの声の魅力はエルヴィスのそれとは異質。
エルヴィスはボブ・ディランの作った<明日は遠く>を歌っているので、聴き比べるとこれが同じ曲かと思うぐらいに違うからおもしろい。
それはアレンジされているわけではなくて、声による違いと文化の 違いで曲がまるで変わってしまう。

ハードウェアでは遜色のない日本が、ソフトウェアではアメリカの相手にならないほど弱い。その理由が分かるような気がします。
それほど両者の声の魅力はドキドキするほど創造的。これぞ!ソフトウェアの力です。アメリカの偉大です!

その魅力あふれる声が、<ハリケーン>では一層魅力的に聴く者をなぎ倒す。
倒されてしまってください。気持ちいいですから。

激しい!声がシャウトしているのではない。ボブの文化がラップ状態でシャウトします!
くり返されるフレーズの中に反撃と同じだけ挫折が内包されている。その分激しい。当然、聴く者は 激しく揺れます。壁さえも揺れる。


♬君がもし黒人なら、通りには出ないことだ。
警官につけ回されたくなければ♬

ただ日々だけが無意味に過ぎていく。22年間だ!気が遠くなりそうな無意味。
単調なサウンドのくり返しが時間の経過とともに「無意味」の凄みを増していく。ディランが聴く者の心を鷲掴みにして引き込んで行く。。。。

素晴らしい!
一生の間で、こんな曲とどれだけ出会えるだろうか。

この曲の姿勢はロックンロールの本質そのもの、生きるうえでパンクそのもの。
AKBを8分聴いても人生の8分は過ぎる。
<ハリケーン>を聴いても8分過ぎる。


個人が選択権を持っている。



ここではライブバージョンをお楽しみいただけますが、この曲のオリジナルバージョンを収録したアルバム『DESIRE/欲望』はボブ・ディランのキャリアを代表する素晴らしい一枚です。シングル盤でも<ハリケーン>はリリースされましたが、アルバム収録バージョンとは違っています。


欲望
1.ハリケーン
2.イシス
3.モザンビーク
4.コーヒーもう一杯
5.オー,シスター
6.ジョーイー
7.ドゥランゴのロマンス
8.ブラック・ダイアモンド湾
9.サラ ※〈CD/SA-CDハイブリッド仕様〉 

ザ・ベスト・オブ・ボブ・ディラン VOL.2
1.シングス・ハヴ・チェンジド
2.激しい雨が降る
3.悲しきベエイブ
4.サブタレニアン・ホームシック・ブルース
5.寂しき4番街
6.追憶のハイウェイ61
7.雨の日の女
8.アイ・ウォント・ユー
9.アイル・ビー・ユア・ベイビー・トゥナイト
10.マイティ・クイン
11.運命のひとひねり
12.ハリケーン
13.チェンジング・オブ・ザ・ガード
14.ライセンス・トゥ・キル
15.シルヴィオ
16.ディグニティ
17.ノット・ダーク・イエット
18.いつまでも若く(Biographヴァージョン)

2013年1月20日日曜日

プリーズ・プリーズ・ミー/ビートルズ



Please Please Me/The Beatles

 Last night I said these words to my girl
I know you never even try, girl
Come on, come on, come on, come on
Please please me, woh yeah
Like I please you

You don't need me to show the way, love
Why do I always have to say, love
Come on, come on, come on, come on
Please please me, woh yeah
Like I please you

I don't want to sound complaining
But you know there's always rain in my heart
I do all the pleasing with you
It's so hard to reason with you, woh yeah

Why do you make me blue
Last night I said these words to my girl
I know you never even try, girl
Come on, come on, come on, come on
Please please me, woh yeah
Like I please you

Please please me, woh yeah
Like I please you





繊細な表現ではない。繊細である必要がない。

このレコードの目的は。2分間の空間にただ大きな音をたてることだ。
♬♫ Come on, come on, come on, come on ♬ 高らかに鳴り響きかせて、恋の喜びや生きる不安、突進することを空いっぱいに声をあげることだ。

ハンブルグで怒りで床をどんどん抜けるほど踏みならして成功したように、大きな音に力があることを学んでいた。

IKEAのレストランで子どもが無邪気に走り回っているように、いまでも大きな声は人を振り向かせるのに有効的だ。あの娘を振り向かせたい。ボクが君にしたように、君もボクを振り向かせてくれないか。大きなサウンドで一緒に遊ぼうよ。 おいでよ、おいでよ、一緒に遊ぼうよ。Please Please Me 

さあ、行くぞ。 Please Please Me攻撃だ。突進だ。
そしてビートルズはロックンロールの連帯に成功した。 
世界中のかわい娘ちゃんをついに振り向かせたのだ。


昨夜 僕はあの娘にこう言ったんだ
君は試してみようともしないんだね
さぁ この腕に飛び込んで 
ねえ お願いだよ。
僕が君に尽くすように
僕にも恋の喜びを味わわせておくれよ

いちいち言わなくたって わかるだろう
それなのにどうして同じことばかり言わせるの?
さぁ この腕に飛び込んで 
ねえ お願いだよ。
僕が君に尽くすように
僕にも恋の喜びを味わわせておくれよ

愚痴なんて言いたくないさ
だけど僕の心はいつも雨降り
僕は君を楽しませるためなら 
なんだってしてるのにでも 
君を説得するのは凄く難しいんだ
どうして君は僕をブルーな気分にさせるのさ

昨夜 僕はあの娘にこう言ったんだ
君は試してみようともしないんだね
さぁ この腕に飛び込んで 
ねえ お願いだよ。
僕が君に尽くすように
僕にも恋の喜びを味わわせておくれよ